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医療コラム

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交通事故後に握力が低下したら…原因の見つけ方と整形外科での治療の進め方

交通事故後に握力が低下したら…原因の見つけ方と整形外科での治療の進め方

交通事故のあと、ペットボトルのキャップがうまく開けられない、字を書くときに力が入りにくい。こうした握力の低下は、事故による首や手首の損傷が原因で起きていることがあります。「ぶつけたのは首なのに、なぜ手の力が弱くなるのか」と不思議に思うかもしれませんが、首の神経は手の筋肉と直接つながっているため、首のケガが握力に影響するのはよくあることです。

この記事では、交通事故後に握力が低下する原因と、整形外科での検査・治療の進め方を解説します。

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交通事故で握力が落ちる原因

交通事故で握力が落ちる原因

握力低下の原因は大きく「首(頚椎)の問題」と「手首・腕の問題」の2つに分かれます。どちらが原因かによって必要な検査も治療も変わるため、まず原因の分類を把握しておくことが大切です。

むちうち(頚椎捻挫)による神経の圧迫

交通事故後の握力低下で最も多い原因がむちうちです。追突などで首が大きく振られると、頚椎(首の骨)の中を通る神経根が圧迫されたり引き伸ばされたりします。手の筋肉を動かす命令は脳から頚椎の神経を通って伝わるため、頚椎の神経が圧迫されると握力が低下するのです。

特にC6(第6頚椎)やC7(第7頚椎)の神経根が障害されると、手や指に力が入りにくくなります。C6の神経根は手首を反らす動きや肘を曲げる動きに関わり、C7は指を伸ばす動きや肘を伸ばす動きに関わっています。握力低下に加えて指先のしびれが出ている場合は、神経根の障害が疑われます。

頚椎椎間板ヘルニア

事故の衝撃で椎間板(背骨の間にあるクッション)が飛び出し、神経を直接圧迫する状態です。むちうちの一種ですが、椎間板の突出がMRIで確認できるため、画像上の根拠がはっきりしやすいのが特徴です。首の痛みだけでなく、肩から腕にかけての放散痛(電気が走るような痛み)を伴うことが多く、握力低下としびれが片側の腕に集中して出る場合は椎間板ヘルニアの可能性があります。

胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)

鎖骨と第一肋骨の間を通る神経や血管が圧迫される状態で、交通事故では鎖骨周辺の打撲や筋肉の緊張がきっかけで発症することがあります。腕を上げたときにしびれや脱力感が強まるのが特徴的な症状です。

デスクワークで腕を前に出す姿勢が続くと症状が悪化しやすく、事故後にオフィスワークに復帰した方が「仕事中だけ手に力が入らない」と訴えるケースがあります。

手首の骨折(橈骨遠位端骨折)やTFCC損傷

事故の際にハンドルやダッシュボードに手をついた衝撃で、手首の骨(橈骨:とうこつ)が折れたり、手首の小指側にある軟骨(TFCC:三角線維軟骨複合体)が損傷したりすると、手首の痛みや可動域の制限から握力が低下します。

このケースでは首ではなく手首に痛みが集中するため、自覚症状から原因を推測しやすい傾向があります。ただし、手首の骨折と首の神経障害が同時に起きていることもあるため、握力低下の原因を手首だけに限定しないことが重要です。

握力低下の原因を特定する検査

握力低下の原因を特定する検査

原因によって治療が大きく変わるため、整形外科では複数の検査を組み合わせて握力低下の原因を絞り込みます。

画像検査(レントゲン・MRI・CT)

まずレントゲンで骨折やずれの有無を確認します。骨に異常がなくても握力が低下している場合は、MRIで椎間板の状態や神経の圧迫を調べます。MRIは神経や軟部組織の状態を写し出せるため、握力低下の原因診断で最も重要な検査です。CTは骨折の形状を立体的に把握する必要がある場合に使います。

交通事故後の握力低下では、首のMRIと手首のレントゲン(またはMRI)の両方を撮ることが多くあります。首の問題なのか手首の問題なのかを初診の段階で見分けるのは難しいことがあるため、両方の可能性を視野に入れて検査するのが一般的です。

神経学的検査

画像検査と並行して、神経の働きを調べる検査を行います。代表的なものを挙げます。

検査名 方法 わかること
スパーリングテスト 首を痛い側に傾けて上から押す 頚椎の神経根が圧迫されているか
ジャクソンテスト 首を後ろに反らして上から押す 頚椎の神経根の障害の有無
アドソンテスト 首を痛い側に回して後ろに反らし、深呼吸した状態で手首の脈を触れる 胸郭出口症候群かどうか
握力測定(スメドレー式) 握力計を左右それぞれ測定 左右差の有無と程度
徒手筋力テスト 医師が手や腕の各筋肉の力を個別に確認 どの神経が障害されているか

これらの検査は痛みを伴うものではなく、診察室で短時間で実施できます。画像検査だけでなく神経学的検査を組み合わせることで、握力低下の原因となっている神経の場所を正確に特定できるようになります。

握力測定の左右差が重要な理由

握力検査では左右の握力を測定し、その差を評価します。健常な方の握力を基準にして、受傷側がどの程度低下しているかを数値で記録します。一般に、受傷側の握力が健常側の半分以下に低下している場合は、神経の障害が疑われます

握力測定は1回だけでなく複数回行い、数値の推移を追うことが大切です。治療開始前の数値を正確に記録しておくことで、リハビリによる回復の度合いや、後遺障害の申請に必要な資料がそろいます。

交通事故後の握力低下に対する治療とリハビリ

交通事故後の握力低下に対する治療とリハビリ

握力低下の治療は原因によって異なりますが、多くの場合は手術を行わない保存療法から始めます。

薬物療法と物理療法

神経の圧迫による握力低下では、まず炎症を抑える薬(消炎鎮痛薬やビタミンB12製剤)で神経の回復を促します。ビタミンB12は神経の修復を助ける働きがあり、しびれを伴う握力低下で処方されることが多い薬です。

物理療法としては、頚椎の牽引療法(首をやさしく引っ張って神経の圧迫を緩和する)や、温熱療法、電気治療などが行われます。手首の骨折後であればギプスや装具で固定したあと、骨がつき始めた段階から徐々に手指の運動を開始します。

リハビリテーション(理学療法)

保存療法と並行して、握力を回復させるためのリハビリが治療の柱になるのが交通事故後の握力低下の特徴です。理学療法士が患者様の症状に合わせて個別のプログラムを組みます。

首の神経障害が原因の場合は、頚椎周囲の筋肉を強化するトレーニングや姿勢の改善指導が中心になります。神経の圧迫を軽減する姿勢を身につけることで、日常生活での握力低下を和らげることができます。手首の骨折やTFCC損傷が原因の場合は、関節の可動域を回復させる訓練のあと、段階的に握る力を強化していきます。

リハビリの通院頻度は症状の程度によりますが、週2〜3回のペースで3〜6ヶ月程度継続するのが一般的です。この期間に定期的な握力測定を行い、回復の推移を記録していきます。

手術が検討されるケース

保存療法を3〜6ヶ月程度続けても握力の改善が見られない場合や、MRIで神経の圧迫が明らかで症状が進行している場合には手術を検討します。頚椎椎間板ヘルニアであれば、飛び出した椎間板を取り除く手術が選択肢に入ります。手首の骨折で骨がずれた状態で固まってしまった場合は、プレートやスクリューで固定する手術を行うこともあります。

手術後もリハビリは必要です。手術で神経の圧迫を取り除いた後、握力が元のレベルに戻るまでには数ヶ月かかるのが一般的です。

握力低下と後遺障害認定の関係

握力低下と後遺障害認定の関係

治療を続けても握力が完全に回復しない場合、後遺障害として認定を受けられる可能性があります。後遺障害の認定は賠償金の算定に直結するため、治療の過程で適切な記録を残しておくことが重要です。

握力低下が該当する後遺障害等級

握力低下が神経症状として後遺障害に該当する場合、主に以下の等級が考えられます。

等級 認定の条件 概要
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの MRIなどの画像所見で神経の異常を医学的に「証明」できる場合
14級9号 局部に神経症状を残すもの 画像所見が明確でなくても、神経学的検査の結果から症状を医学的に「説明」できる場合

12級の認定にはMRIなどの画像検査で神経障害の原因を客観的に証明できることが条件です。14級は画像で明確に写らなくても、事故の状況・治療経過・神経学的検査の結果を総合して「交通事故が原因である」と医学的に説明できれば認定の可能性があります。

認定に向けて整形外科でできること

後遺障害の認定には医師が作成する「後遺障害診断書」が必要です。この診断書に記載される情報の精度が、認定の結果を大きく左右します。

整形外科では、認定に必要な医学的根拠を積み上げるために以下の対応を行います。

  • 事故直後から定期的に握力を測定し、数値の推移をカルテに記録する
  • 早い段階でMRIなどの画像検査を実施し、神経の圧迫や損傷の有無を客観的に示す
  • スパーリングテストなどの神経学的検査を行い、結果を診断書に反映する

患者様にお願いしたいのは、症状の変化を毎回の診察時にできるだけ正確に伝えることです。「前回より握力が落ちた気がする」「朝方にしびれが強くなった」など、日常生活で感じた変化が診断書の記載内容に直結します。

なお、後遺障害等級の認定手続きや慰謝料の算定については法律の専門領域になるため、詳しくは交通事故に強い弁護士への相談をおすすめします。

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整形外科への通院で気をつけること

整形外科への通院で気をつけること

握力低下の回復には継続的な通院が欠かせませんが、受診のタイミングや保険の使い方を知っておくと、治療も補償もスムーズに進みます。

事故後は早めに受診する

交通事故後の握力低下は、事故の直後ではなく数日〜数週間経ってから症状が出るケースがあります。事故直後は痛みやショックで気づかないことも多いのですが、事故から時間が経ちすぎると「事故が原因」であることを医学的に示しにくくなるため、握力の違和感を感じたらできるだけ早く整形外科を受診してください。目安として、事故後遅くとも2〜3日以内の受診が望ましいです。

自賠責保険で治療できる

交通事故による握力低下の治療費は、加害者側の任意保険会社による「一括対応」(保険会社が医療機関に治療費を直接支払う仕組み)が成立すれば、窓口での自己負担なく通院できます。ベースとなる補償の枠組みは自賠責保険で、加害者が任意保険に加入していれば、自賠責の枠を超える分も任意保険でカバーされるのが一般的です。

「費用が心配で通院をためらっている」方もいますが、交通事故の治療は加害者側の保険でまかなわれるのが原則です。保険の手続きについては、クリニックの受付でご案内できますので、予約時にお申し出ください。

通院の中断はリスクになる

治療の途中で通院を中断すると、2つの問題が生じます。1つは、治療の効果が途切れて握力の回復が遅れること。もう1つは、通院記録に空白期間ができることで、後遺障害の申請時に「症状が軽かったのでは」と判断されるリスクがあることです。

仕事や家庭の都合で通院が難しくなった場合は、自己判断で中断せず、担当医に相談してください。通院頻度の調整は可能です。

交通事故の握力低下に関するよくある質問

交通事故の握力低下に関するよくある質問

握力が落ちている間、自宅でできるトレーニングはありますか?

自己判断でのトレーニングは症状を悪化させるおそれがあるため、必ず担当医や理学療法士の指示を受けてから行ってください

神経の圧迫が原因の場合、無理に握力を鍛えようとすると首や腕に余計な負荷がかかります。リハビリがある程度進んだ段階で、柔らかいボールを軽く握る運動やゴムバンドを使った指の開閉運動など、医療スタッフから指導されたメニューを自宅で継続するのが安全な進め方です。

握力低下はリハビリで元に戻りますか?

原因と重症度によります。むちうちに伴う軽度の握力低下であれば、投薬とリハビリで数ヶ月以内に改善するケースが多いです。一方、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫が強い場合や、手首の骨折後に関節の変形が残った場合は、完全には戻らない可能性もあります。

改善の見通しは画像検査の結果と治療経過を総合して担当医が判断しますので、まずは正確な診断を受けることが出発点になります。

整形外科と整骨院、どちらに通えばよいですか?

握力低下の原因を診断できるのは医師がいる整形外科です。レントゲンやMRIなどの画像検査、後遺障害診断書の作成は整形外科でなければ行えません。整骨院での施術は整形外科の治療と並行して受けることも可能ですが、まず整形外科で正確な診断を受け、治療方針を立てたうえで判断することをおすすめします。

まとめ

まとめ

交通事故後の握力低下は、首の神経の問題から手首の骨折まで、原因がさまざまです。原因によって治療法が異なるため、まず整形外科で画像検査と神経学的検査を受けて正確な診断を得ることが、回復への第一歩になります。

品川大井町整形外科・リハビリクリニックでは、院内でのレントゲン検査に加え、提携先の病院でのMRI・CT撮影にも対応しており、理学療法士によるリハビリテーションまで一貫してサポートしています。交通事故後に握力の低下を感じている方は、お早めにご相談ください。自賠責保険による治療にも対応しています。

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この記事の監修者

品川大井町整形外科 リハビリクリニック

院長 福山泰平

当院では、整骨院や接骨院、整体・マッサージなどではできない、交通事故の専門治療プログラムを行っています。充実した機器と広いリハビリ設備を完備しておりますので、どうぞ、安心してご来院ください。

経歴
神戸大学医学部 卒業
神戸大学医学部大学院(医学系研究科)修了
大阪大学医学部大学院(医学系研究科)特別研究生
M.D. & Ph.D. 取得
神戸大学医学部附属病院 勤務
神戸労災病院 勤務
三菱神戸病院 勤務
資格・認定
日本整形外科学会認定 整形外科専門医
日本整形外科学会認定 リウマチ医
日本整形外科学会認定 リハビリ医
日本運動器科学会 リハビリ指導医

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