交通事故による鎖骨骨折|固定で治す場合と、手術になる場合の分かれ目
- 2026年10月26日
- 交通事故
バイクで転倒して肩から落ちた。鎖骨が折れていると言われ、「固定で様子を見る」とも「手術も考えられる」とも聞いた。どちらになるのか、仕事にはいつ戻れるのか——。
鎖骨骨折は、交通事故で比較的よく起こる骨折です。そして、多くの場合は手術をせずに治せます。 腕をつり包帯で支え、4〜6週間ほど固定して骨がつくのを待つのが基本の治療です。
一方で、手術が必要になる条件もはっきりしています。
この記事は、大井町駅から徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックが、交通事故の診療の現場から「交通事故による鎖骨骨折」について整理したものです。
なお、骨折の形や経過には個人差があるため、固定か手術かはレントゲンを見て判断します。
鎖骨はどこにあり、なぜ折れやすいのか
鎖骨は、胸の真ん中の骨(胸骨)と肩甲骨とを横につなぐ、細長い骨です。首の付け根の下、指で触れる細い骨がそれにあたります。
鎖骨骨折の多くは、転んで腕を伸ばして手をついたとき、肩から倒れたとき、肩を直接強く打ったときに起こります。折れる場所は、鎖骨の真ん中あたりがもっとも多くなります。
交通事故では、次のような場面が典型です。
- バイクや自転車で転倒し、肩から地面に落ちた
- とっさに腕を伸ばして手をついた
- ハンドルや車体、路面に肩を強く打った
- シートベルトが強く食い込んだ
鎖骨は、腕と体幹を骨でつないでいる部分です。肩に加わった力が、そのまま鎖骨に伝わります。細い骨に力が集中するため、折れやすいという構造上の事情があります。
こんな症状が出ます
折れたところが痛んで腫れ、痛みが肩のほうまで広がることがあります。骨がぐらぐら動くような不安定さを、自分で感じる方もいます。
さらに、特徴的な所見があります。
折れた骨の端が皮膚を押し上げる「テンティング」が見られることもあります。
「テンティング」とは、折れた骨の先が皮膚を内側から押し上げて、テントを張ったように盛り上がる状態です。これは手術を検討する理由のひとつになります。
そのほか、次のような状態になります。
- 腕を上げられない、動かすと激痛が走る
- 肩が下がって見える、左右で形が違う
- 深呼吸や咳で痛みが強くなる
- 折れた部分に軽く触れるだけでも、強く痛む
皮膚が破れて骨が見えている場合は、開放骨折です。日本整形外科学会は「骨折と同時に皮膚が破れて骨折部が露出したものを開放骨折と呼び、治療を急ぐ必要があります」としています。この場合は、すぐに救急医療機関へ向かってください。
診断はレントゲンで行います
骨折の位置と、骨のずれの程度を確かめるために、レントゲン(X線)検査を行います。必要に応じてCT検査も加えます。
触察でおおよそ判断できますが、具体的な治療方針を決めるにはレントゲン検査が必要です。どこで、どのように折れているか、骨片がどれくらい離れているか——これが、次の項目の判断材料になります。
なお、院内にあるのはレントゲンで、CTは置いていません。 撮影が必要と判断した場合は、東京品川病院などの医療連携先を当院で手配し、画像データ(CD-ROM)をもとに当院で読影します。骨折の形を早く確かめたい場合は、初日のうちに撮影まで進められることもあります。
固定で治す場合と、手術になる場合

多くは、固定で治します
鎖骨骨折の多くは、つり包帯で腕を支え、4〜6週間ほど固定して治します。
「4〜6週間」というのは、骨がついてくるまでのおおよその目安です。この間、腕をつり包帯で支え、鎖骨に力がかからないようにします。
手術が必要になる条件は3つ
手術が検討されるのは、主に次の3つの場合です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ①折れた骨の端どうしが大きく離れている | 骨が離れたままでは、うまくつかない、または変形して治ることがあります |
| ②骨の端が皮膚を内側から押し上げている | 骨の先が皮膚を突き破る危険があります |
| ③鎖骨を支える靱帯も切れている | 鎖骨を支える靱帯が切れていると、位置が保てません |
当院では手術は行いません。診察とレントゲン検査で状態を確かめ、手術が必要と判断した場合は、連携先の医療機関へご紹介します。そして、手術のあとのリハビリを当院で担当することができます。
固定中に気をつけていただきたいこと
つり包帯での固定期間中、次のことに注意してください。
- つり包帯を自己判断で外さない——外して腕を使うと、骨がずれることがあります
- 重い物を持たない——荷物、子どもの抱っこ、カバンの持ち方に気をつけてください
- 横向きに寝ない——折れた側を下にすると痛みが強くなります。上半身を少し起こして寝ると楽なことがあります
- 服の着脱は、着るときは折れた側から——脱ぐときは折れていない側から
- 車の運転は控える——ハンドル操作に支障が出ます。医師にご確認ください
そして、次の症状があればすぐにご連絡ください。
- 指先のしびれ、感覚の鈍さ
- 腕や指が動かしにくい
- 手の色が悪い、冷たい
- 痛みがどんどん強くなる
- 骨が皮膚を押し上げてきた
鎖骨のすぐ下には、腕へ向かう血管と神経が通っています。これらの症状は、そこに影響が及んでいるサインかもしれません。
また、鎖骨の下には肺もあります。強い衝撃を受けた場合、息が苦しい、胸が強く痛むという症状があれば、鎖骨だけの問題ではない可能性があります。その場合は救急医療機関へお急ぎください。
固定中も、肩は固めません

ここが、回復の分かれ目になります。
日本整形外科学会は、骨折の治療についてこう書いています。
ところで、骨折だけが治っても、その周囲が不健康になってはいけません。骨折部がグラグラしない限りは、その周囲の関節や筋肉は動かした方が良い場合が多く、必要以上の安静はかえってよくありません。
鎖骨骨折で問題になるのは、肩関節が固まることです。腕をつったまま数週間動かさずにいると、骨はついたのに肩が上がらないという状態になることがあります。
そのため、固定している間も、動かしてよい部分は動かします。
- 手首と指——握ったり開いたりを繰り返す
- 肘——医師の許可した範囲で曲げ伸ばし
- 肩——許可が出たら、少しずつ振り子のように動かす練習から
どこまで動かしてよいかは、骨折の形と固定の状態によって違います。必ず、診察で確認してください。自己流で動かすと、骨がずれる恐れがあります。
骨がつくまでの経過
固定を開始してから骨がつくまでの一般的な経過は以下のとおりです。
| 時期 | 状態と、やること |
|---|---|
| 受傷〜1週 | 痛みと腫れが強い時期。固定を保ち、痛みを抑えることが優先。手首・指は動かします |
| 1〜3週 | 痛みが落ち着いてくる時期。肘や手の運動を続けます |
| 3〜6週 | レントゲンで骨のつき具合を確認しながら、許可された範囲で肩を動かし始めます |
| 固定終了後 | 可動域と筋力を戻す時期。リハビリの本番です |
| その後 | 仕事や運動に戻していく時期。負荷を段階的に上げます |
この経過は目安です。日本整形外科学会も、骨折について「治療方法や骨癒合までの期間は、折れ方によって千差万別です」としています。
また、骨のつきやすさには条件があります。学会は、「骨折部のズレが小さく、骨折部の動きが少なく、骨折部に元気な細胞が多ければ、骨折はつきやすい」としています。つり包帯を外して腕を使ってしまうと、この「動きが少ない」という条件が崩れます。
「もう痛くないから大丈夫」と自己判断で外してしまう方がいらっしゃいますが、痛みが引いたことと、骨がついたことは別です。レントゲンで確認してから判断します。
固定が終わってからのリハビリ
固定を外したあと、多くの方が「肩が上がらない」「腕が重い」と感じられます。数週間動かしていなかったのですから、当然のことです。
ここからは、動きと筋力を戻していく段階になります。
- 可動域訓練——肩を上げる、後ろに回す動きを、少しずつ広げます
- 筋力訓練——肩・肩甲骨まわりの筋肉を鍛え直します
- 物理療法——牽引、低周波、干渉波、マイクロ波、温熱療法などを組み合わせます
日本整形外科学会は、ケガからの復帰について、ブランクの間に低下した運動機能を再び獲得していくためのリハビリテーションが必要であるとしています。「骨がついた=治った」ではありません。
当院のリハビリは、理学療法士・柔道整復師・あんまマッサージ師・鍼灸師といった国家資格を持つスタッフが、予約制のマンツーマンで担当します。
生活の中で困ることと、その工夫
鎖骨は、腕を使うあらゆる動作に関わります。固定中は、思った以上に不便を感じられると思います。固定期間中の主な困りごとと工夫の例は以下のとおりです。
| 困ること | 工夫 |
|---|---|
| 服が着られない | 前開きの服にする。着るときは折れた側から、脱ぐときは反対側から |
| 眠れない | 上半身を起こして寝る。クッションで腕を支える |
| 髪が洗えない | 洗面台で前かがみにならず、シャワーチェアなどを使う |
| 買い物の荷物が持てない | リュックは肩に食い込むので避ける。配達サービスを使う |
| 通勤が不安 | 混雑した電車では、ぶつかられないよう壁側に立つ |
| 家事ができない | 無理に片手で持ち上げない。頼れるところは頼る |
そして、痛みは我慢しないでください。痛み止めは、痛みを抑えるだけでなく、眠れるようにする、動かしてよい範囲を動かせるようにするという役割もあります。
眠れない日が続くと、回復にも影響します。「これくらいは我慢するもの」と思わずに、診察でお伝えください。
後遺障害としての扱い
鎖骨骨折では、変形治癒による見た目の変化、肩の可動域制限、痛みが残る場合があり、これらは後遺障害の対象となります。
等級が付くかどうかは、医療機関の判断で決まるものではありません。
自賠責保険では、請求書類が損害保険料率算出機構の交通事故調査事務所に送られ、調査事務所が発生状況、支払いの適確性(傷害と事故の因果関係など)、損害額などを公正かつ中立の立場で調査します。医療機関が作成するのは、後遺障害診断書(後遺症診断書)までです。この書類は医師でなければ作成できません。
書くうえで求められるのは、痛みなどの具体的な症状を、レントゲン画像やその他の検査をもとに、整形外科の医師が客観的に記載していることです。
鎖骨の場合、記録されるのは次のようなことです。
- レントゲン画像(骨のつき具合、変形の程度、短縮の有無)
- 肩の可動域(上げる、外に開く、後ろに回すなど。角度で測ります)
- 変形の程度や、左右を比べたときの差
- 痛みの部位と程度(どの動作で痛むかも含めて記録します)
- 日常生活・仕事への支障(具体的にできない動作を挙げていただきます)
これらは、通院のたびに積み上げていく記録です。最後にまとめて用意できるものではありません。
当院でできること
品川大井町整形外科・リハビリクリニックは、整形外科・リハビリテーション科を掲げ、交通事故の診療に力を入れています。
- 院内のレントゲン検査による診断と、経過の確認
- つり包帯などによる固定と、その管理
- 国家資格を持つスタッフによるマンツーマンのリハビリ(予約制)
- 物理療法(牽引・低周波・干渉波・マイクロ波・温熱療法)
- CT検査が必要な場合の連携先への予約と、画像データによる診断
- 手術が必要な場合の連携先へのご紹介と、術後リハビリの受け入れ
- 警察に提出する診断書の当日発行、後遺障害診断書の作成
- 交通事故の当日初診予約(直通ダイヤル 03-6433-9670/WEBでも可。自賠責保険のみ)
- 紹介状がなくても転院可能
診療時間は月〜金 10:00〜14:00/16:00〜20:00、土 10:00〜14:00(休診は日曜・祝日)。平日は夜20時まで、月〜土は終日リハビリを行っています。大井町駅から徒歩1分です。
※土曜の診療・リハビリは予約制です。受付は診療終了の30分前まで(午前13:30/午後19:30)。
▶ 初めての方へ
よくある質問
Q. 仕事にはいつ戻れますか。
A. 仕事の内容によります。デスクワークであれば、つり包帯をしたまま戻れる場合もあります。一方、重い物を持つ仕事や、腕を上げる仕事は、骨がつくまで難しいことがあります。具体的な作業内容をお伝えください。
Q. 固定は何週間ですか。
A. つり包帯で4〜6週間というのが一般的な目安です。ただし、骨折の形や経過によって変わります。レントゲンで骨のつき具合を確認しながら判断します。
Q. 手術したほうが早く治りますか。
A. 早さだけで決めるものではありません。手術が検討されるのは、骨の端どうしが大きく離れている、骨の端が皮膚を押し上げている、靱帯も切れているといった場合です。診察とレントゲンで判断します。
Q. 骨が出っ張ったまま治ると聞きました。
A. 鎖骨は皮膚のすぐ下にあるため、つき方によっては膨らみが残ることがあります。程度は骨折の形によります。気になる場合は、診察でご相談ください。
Q. お風呂はどうすればよいですか。
A. つり包帯を外してよいかどうかは、時期によります。濡らし方や、外してよい範囲を診察でお伝えします。自己判断は避けてください。
Q. 事故から日が経っていますが、まだ痛みます。
A. 骨がついたあとも、肩の動きの制限や痛みが残ることがあります。リハビリで戻せる部分があります。紹介状がなくても受診いただけますので、ご相談ください。
Q. 「8の字固定」というものを見ました。つり包帯とどちらがよいですか。
A. 固定の方法は、骨折の形と部位によって選びます。どの方法が向くかは、レントゲンを見たうえで判断します。自己判断で市販の固定具を使うことは避けてください。
Q. 子どもが鎖骨を折りました。大人と同じですか。
A. お子さんの骨は、大人とは治り方が違います。また、小児の骨にはX線写真に写らない部分があり個人差が大きいため、必要に応じてケガをしていない側のX線写真も撮って比較することがあります。早めにご相談ください。
Q. スポーツはいつから再開できますか。
A. 骨のつき具合と、競技の内容によります。接触のあるスポーツは、とくに慎重に判断します。日本整形外科学会も、ケガからのスポーツ復帰について、いきなり元のレベルに戻ろうとすると、その過程でまたケガをする危険があるとしています。段階を踏んで戻しましょう。
Q. リハビリはどれくらい通いますか。
A. 交通事故のリハビリは、治療開始の最初の3か月程度は週3回以上(〜5回)をおすすめしています。時間は20分刻みで、目安は40分〜1時間程度です。骨折の場合は、固定の時期と外したあとで内容が変わります。
まとめ
- 鎖骨は胸骨と肩甲骨を横につなぐ細長い骨で、折れるのは真ん中あたりが多い
- 症状は、痛みと腫れ、肩まで広がる痛み、骨がぐらつく感じなど。骨の端が皮膚を押し上げるテンティングが見られることもあります
- 診察に加えて、折れた位置とずれの程度をレントゲンで確かめます
- 多くは、つり包帯で4〜6週間ほど固定して治します
- 手術が検討されるのは、①骨の端どうしが大きく離れている ②骨の端が皮膚を押し上げている ③靱帯も切れている場合です
- 指先のしびれ、手の色が悪い、痛みが増す——これらはすぐに連絡してください
- 固定中も、動かしてよい部分は動かします。肩を固めないことが、あとの戻り方を分けます
- 後遺障害の等級を決めるのは損害保険料率算出機構の調査事務所で、医療機関は診断書を作成します
鎖骨を骨折された方、固定のあとで肩の動きが戻らない方は、ご相談ください。手術をした病院とは別に、通いやすい場所でリハビリを続けるという選び方もできます。当院は大井町駅から徒歩1分で、平日は20時まで開いています。
参考文献
- MSDマニュアル家庭版「鎖骨の骨折」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/25-外傷と中毒/骨折/鎖骨の骨折
- 日本整形外科学会「骨折」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html
- 日本整形外科学会「捻挫」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain.html