交通事故のあと「念のため」の検査に意味はあるのか|3つの理由と、費用の話
- 2026年10月22日
- 交通事故
低速の追突で、車の傷も軽い。体もどこも痛くない。それでも周りから「念のため病院へ行ったほうがいい」と言われる——このとき、「大げさではないか」「費用がかかるのでは」と迷われる方は多いと思います。
先にお答えします。「念のため」の検査には、はっきりした3つの意味があります。 そして、自賠責保険での治療であれば、窓口での費用負担はありません。
本記事は、大井町駅から徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックが、交通事故診療の現場の視点から解説します。
なお、症状の出方には個人差があるため、必要な検査の範囲は実際の診察によって決定します。
「念のため」の検査には、3つの意味があります
①いま出ていない症状を、見逃さないため
事故の当日は、気持ちが高ぶり緊張しているため、痛みの感じ方が鈍くなります。 「たぶん大丈夫」と思っていた方が、翌日や数日後に強い痛みを訴えられることは、めずらしくありません。
さらに、痛みを感じにくいケガもあります。日本整形外科学会は捻挫について、こう書いています。
痛みを感じにくい靭帯もあるため、余り痛くないから大丈夫と考えてはいけません。
つまり、「痛くない=ケガがない」ではないということです。
②記録を残すため
これは、あとで効いてくる理由です。
交通事故の診療では、レントゲン検査を「記録を残す」という意味でも行います。 事故の直後にどういう状態だったかが残っていることは、その後の判断の土台になります。
大きな症状ではなくても、交通事故によるものであると証明するための「診断書」を作成します。 診断書がないと、交通事故によるケガであることを証明できないこともあります。
③事故との関係を保つため
いちばん実務的な理由です。
「あとから痛くなったら、そのとき行けばよい」という考え方には、この落とし穴があります。時間が空いてから受診すると、その痛みが事故によるものだと説明することが難しくなります。
そして、症状が軽いからと放置しておくと、後から症状が重くなってくることもよくあります。
費用はどうなるのか
「検査に行って、費用がかかるのは困る」という不安は、当然だと思います。
結論から言えば、交通事故での治療費は、原則的に加害者側が負担することになっているため、被害者側(患者さん)の負担金なしで検査や治療を受けていただけます。
自賠責保険は、「自動車損害賠償保障法」に基づき、公道を走るすべての自動車・バイク・原付などの保有者に加入が義務付けられている保険です。交通事故の被害者は、加害者の自賠責保険によって治療費が支払われるようになっています。
自賠責保険で交通事故の治療を行う場合、医療機関から保険会社に治療費を請求するため、患者さんの負担は0円となります。
窓口負担をなくすための手順
事故後、保険会社に「病院名と電話番号」を電話でお伝えください。 すぐに保険会社から医療機関に連絡が入ります。医療機関が保険会社から連絡を受けたあとは、受診の際の窓口負担はありません。
保険会社へ連絡されていない段階で受診された場合には、一時的に一部負担金(1万円まで)をお支払いいただく必要がありますが、その後、保険会社から連絡を受けた時点で返金いたします。
「連絡が済んでいないから受診できない」ということはありません。受診が先で構いません。
なお、ご自身の過失が大きい場合や、交通事故の相手が治療費を支払う場合などには、窓口負担が発生することがあります。その場合は、ご自身で保険会社や相手方へ請求していただくことがあります。
実際に何を調べるのか
「念のため」といっても、やることは決まっています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 問診 | 事故の状況(衝突の向き、座席の位置、体をどこにぶつけたか)と、いまの症状 |
| 診察 | 痛む場所、押したときの痛み、動かせる範囲(可動域)、しびれの有無、力の入り方 |
| レントゲン検査 | 骨折や脱臼がないかを確かめます |
| 追加の検査 | 必要に応じてCT・MRI。当院にはありませんので、連携先で撮影します |
日本整形外科学会は、骨折について「症状を確認し、X線写真を撮ります。大概はこれで診断がつきます」としています。一方で、骨折の転位(ずれ)が無かったり、X線写真に写りにくい骨折の場合は、普通のX線写真だけではなかなか診断できないことがあり、そのような場合にはCT検査が役に立ちます。
当院に備えているのはレントゲンで、CT・MRIはありません。 必要になった場合は、東京品川病院などの医療連携先や、通いやすい場所の施設を当院で手配し、撮影後の画像データ(CD-ROM)をもとに当院で読影します。急ぐ場合は、初診の日に撮影して結果までお伝えできることもあります。
診察で伝えていただきたいこと
検査の精度は、お話しいただく情報に支えられています。日本整形外科学会も、捻挫の診断について「受傷時の状態を教えてもらえれば、診断にとても役にたちます」としています。
思い出せる範囲で構いませんので、次のことをお伝えください。
- どの向きから衝突されたか(追突、正面、側面)
- どの座席にいたか、シートベルトをしていたか
- 体のどこかをぶつけたか(ハンドル、ドア、天井など)
- その場でどこが痛んだか
- いま気になっていること(軽い違和感でも構いません)
症状は「あとから」出てくることがあります
「念のため」を軽視できない理由として、遅れて現れる主な症状について説明します。
交通事故のあと、次のような形で症状が現れることがあります。
- 首・背中・腰・肩・手足の痛み
- 首・腰・手足が動かしにくい、動かせない方向がある(可動域制限)
- 肩・背中のこり、筋肉の過度な緊張
- 手や指のしびれ、うまく力が入らない
- 頭痛・吐き気・めまい
- だるさ・無気力・食欲低下・倦怠感といった自律神経の症状
そして、日常生活の中では、こういう出方をします。
- 集中力が落ちて、長時間の作業が苦手になる
- 痛む場所が移動する(昨日は腰、今日は首)
- 夜間や明け方に症状が出る
- 天候や季節の変わり目で症状が出る
- 消えたと思ったら、数日後にまた出る
- 体の冷えに敏感になる/疲れやすい/眠りが浅い
これらは、事故の当日にはまったく見えていないことがあります。「事故のあと数日は何ともなかった」という方が、あとで困られるのは、この時間差のためです。
なぜ、あとから出るのか
日本整形外科学会は、受傷の仕組みをこう説明しています。受傷時に、反射的に頚椎に対する損傷を避ける防御のための筋緊張が生じ、衝撃の大きさによっては筋の部分断裂や靭帯の損傷が生じています。
つまり、事故の瞬間に筋肉や靭帯にはすでに傷がついていることがあり、それが炎症として表に出てくるまでに時間がかかる、ということです。
さらに学会は、受傷後しばらくの間(1〜3か月)は局所に痛みが生じるとし、この期間に局所を安静にする習慣がつけば痛みが長引く原因となるとも書いています。早い時期に診てもらい、動かしてよい範囲を知っておくことには、こういう意味もあります。
「念のため」がとくに大事な場面
次の場合は、症状の有無にかかわらず、優先して受診してください。
頭を打った、または打った可能性がある
頭部の症状は、あとから出てくることがあります。 意識の異常、繰り返す嘔吐、けいれんがあれば、救急医療機関へ急いでください。
高齢の方
骨全体が弱っていたり、骨の一部が溶けていたりすると、弱い力でも骨折します(病的骨折)。骨粗しょう症のある方では、軽くみえる事故でも骨折していることがあります。
お子さん
小児の骨にはX線写真に写らない部分があり、個人差が大きいため、その部位の骨折が疑われる場合は、ケガをしていない方のX線写真も撮って比較することがあります。また、お子さんは症状をうまく言葉にできません。
もともと持病がある方
首や腰にもともと変化がある方は、事故による症状が上乗せされていることがあります。これは診察で切り分けます。
なお、X線やMRIでは、年齢に応じた変性変化が写ることがあります。日本整形外科学会は外傷性頚部症候群について、X線・MRIとも年齢に応じた変性変化を認めるが、外傷との関係はないとしています。画像に何か写っていても、それが事故によるものとは限りません。だからこそ、症状の経過とあわせて見ることが必要になります。
妊娠中の方
レントゲン撮影の方法や順番を調整します。妊娠している、あるいはその可能性がある場合は、必ず受付や診察でお申し出ください。
「異常なし」と言われたら
検査で異常が見つからなかったとき、「行った意味がなかった」と感じる方がいらっしゃいます。
そんなことはありません。「骨折や脱臼がない」ことが確認できたという結果です。これは治療方針を決めるうえで必要な情報であり、そのうえで安心して体を動かせるという意味もあります。
日本整形外科学会は、外傷性頚部症候群(いわゆるむちうち)についてこう書いています。
骨折や脱臼がないことは確認が必要です。
そして、骨折や脱臼がなければ、受傷後2〜4週間の安静の後は頚椎を動かすことが痛みの長期化の予防となるとされています。安静期間はできるだけ短い方がよいのです。
つまり、「異常なし」が分かることで、次にやることが決まります。 何もなかったのではなく、動かしてよいと分かったということです。
なお、X線で異常がない関節のケガは捻挫という診断になります。捻挫とは、X線に写らない部分のケガです。「レントゲンで異常なし」と「ケガがない」は、同じではありません。
検査を受けたあと、どうなるのか
「検査だけのつもりで行ったら、そのまま通院になるのでは」という心配もあると思います。実際の分かれ方をお伝えします。
| 結果 | その後 |
|---|---|
| 骨折・脱臼が見つかった | 固定や手術を含めた治療に入ります。必要なら連携先へご紹介します |
| 骨折はないが、痛みや可動域の制限がある | 痛みを抑える手当てをしたうえで、リハビリを組み立てます |
| 症状も所見もない | 経過観察になります。何か出てきたら再受診していただきます |
いちばん多いのは、真ん中です。骨折はないが、首や腰に痛みがあり、動かしにくい——これがむちうち(外傷性頚部症候群)の典型で、X線検査での骨折や脱臼は認められません。
この場合、急性期はまず痛みを和らげ、炎症を抑えることを優先します。症状が少し軽減したあとは、医師の監督のもとで運動器リハビリテーション(運動療法)と物理療法(牽引・低周波・干渉波・マイクロ波・温熱療法)を組み合わせていきます。
「検査だけで終わる」ことも、実際にあります。そのときは、それでよいのです。
診断書は、その場でもらえます
検査を受けたら、警察に提出する診断書を作成します。当院では当日発行しています。
診断書を警察に提出することで、自動車保険が適用される人身事故として処理されます。 また、診断書を提出しておくことで、症状が残って長期治療が必要になった場合でも、後遺症診断が可能となります。
「念のため」の受診が実際に効いてくるのは、この書類の面です。受診しなかった期間は、あとから埋められません。
受診をためらう理由への答え
「相手に悪い気がする」
治療費は加害者側の自賠責保険から支払われます。加害者個人の財布から出るわけではありません。自賠責保険は、加害者の経済状況にかかわらず被害者が最低限の補償を受けられるようにするための制度です。
「軽い事故で大げさに思われそう」
交通事故に遭われたら、とりあえず検査をする気持ちでも結構です。 私たちは、そういう受診を歓迎しています。
「忙しくて時間がない」
当院は平日、夜20時まで診療しています。交通事故の初診は当日予約ができます(自賠責保険のみ)。
「物損で処理してしまった」
診断書を警察に提出することで、人身事故扱いに切り替えられる場合があります。 まずは受診してください。
当院でできること
品川大井町整形外科・リハビリクリニックは、整形外科・リハビリテーション科を掲げ、交通事故の診療に力を入れています。
- 交通事故の当日初診予約(直通ダイヤル 03-6433-9670/WEBでも可。自賠責保険のみ)
- 院内のレントゲン検査
- 診断・投薬・注射・リハビリ・診断書作成のワンストップ対応
- 警察に提出する診断書の当日発行
- CT・MRIが必要な場合の連携先への予約と、画像データによる診断
- 国家資格を持つスタッフによるマンツーマンのリハビリ(予約制)
診療時間は月〜金 10:00〜14:00/16:00〜20:00、土 10:00〜14:00(休診は日曜・祝日)。大井町駅から徒歩1分、品川駅から3分です。
※土曜の診療・リハビリは予約制です。受付は診療終了の30分前まで(午前は13:30/午後は19:30)。
▶ 初めての方へ
よくある質問
Q. 検査だけ受けて、治療はしなくてもよいですか。
A. 構いません。検査の結果、治療が要らないと判断されれば、それで終わりです。 ただし、あとから症状が出たときのために、受診した記録は残しておく価値があります。
Q. 事故から2週間経ちました。いまさら検査しても意味はありますか。
A. あります。 遅れたことは変えられませんが、いま調べておくことで、これから先の判断材料になります。 経過を詳しくお伝えください。
Q. 検査はどれくらい時間がかかりますか。
A. 問診・診察・レントゲンで、通常は当日中に結果までご説明できます。CT・MRIが必要な場合は、連携先での撮影日を調整します。
Q. レントゲンの被ばくが心配です。
A. 必要な範囲で撮影します。妊娠している、あるいはその可能性がある場合は、必ずお申し出ください。 撮影方法を含めて相談します。
Q. 検査を受けたのに保険会社が治療費を認めてくれません。
A. 医師の診断と記録があることが前提になります。当院では、必要な証明書を随時作成していますので、ご相談ください。
Q. 家族が事故に遭いました。本人が行きたがりません。
A. 「何もなければそれでよい」ということを伝えてあげてください。 受診しない選択は、あとから症状が出たときに選択肢が限られます。
Q. 整骨院で診てもらうのではだめですか。
A. 検査という意味では足りません。日本整形外科学会は、接骨院(いわゆる整骨院)には医師はおらず、X線写真も撮れないとしています。レントゲン検査・診断・診断書の作成は、医療機関でしかできません。
Q. 加害者側なのですが、検査を受けてよいですか。
A. ケガをされたのであれば受診してください。ただし、費用の扱いはご自身の保険の内容によって異なります。 ご加入の保険会社にご確認ください。
Q. 検査の結果が「異常なし」でも、通院を続けたほうがよいですか。
A. 症状があるかどうかによります。痛みや動かしにくさが残っているなら、リハビリを続ける意味があります。 何も症状がないのであれば、経過観察で構いません。判断は診察のうえでご相談します。
まとめ
- 「念のため」の検査には、①見逃しを防ぐ ②記録を残す ③事故との関係を保つという3つの意味があります
- 痛みを感じにくい靭帯もあるため、痛くないから大丈夫とは言えません
- 自賠責保険での治療なら、窓口での費用負担はありません(保険会社への連絡が済んでいれば)
- 検査内容は問診・診察・レントゲンで、必要に応じてCT・MRI(当院にはなく、連携先で撮影します)を行います
- 頭を打った方・高齢の方・お子さんは、優先して受診してください
- 「異常なし」は無駄ではありません。骨折や脱臼がないと分かることで、動かしてよいと決まります
事故のあと、症状がなくても気になることがあれば、整形外科にご相談ください。「何もなかった」という結果を受け取りに行く——それも受診の立派な理由です。
交通事故のあとの受診や通院は、大井町駅徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックにご相談ください。
参考文献
- 日本整形外科学会「骨折」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html
- 日本整形外科学会「捻挫」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain.html
- 日本整形外科学会「外傷性頚部症候群」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/whiplash_injury.html