脛骨高原骨折(高原骨折)と後遺障害|膝の関節内骨折で、経過を分けるもの
- 2026年10月26日
- 交通事故
バイクの事故で「脛骨高原骨折(けいこつこうげんこっせつ)」と診断された。手術を受けて退院し、いまはリハビリ中。ただ、膝が思うように曲がらない——このまま残るのだろうか。
脛骨高原骨折は、膝の関節の中に及ぶ骨折です。関節の面が傷むため、その後の膝の動きや、長い目で見た関節の状態に影響します。
だからこそ、術後のリハビリと、経過の記録が大事になります。
本記事は、大井町駅から徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックが、交通事故の診療の現場から「脛骨高原骨折(高原骨折)と後遺障害」について整理したものです。
なお、骨折の形や経過には大きな幅があります。個別の方針は骨折の形と手術の内容で決まります。
脛骨高原骨折とは、どこの骨折か
膝の下にあるすねの骨を脛骨(けいこつ)といいます。そのいちばん上、膝関節に接する平らな部分が「高原(プラトー)」です。
脛骨高原骨折は、すねの骨の上の端が割れ、その割れ目が膝の関節の中にまで及んでいる骨折です。
つまり、関節の中まで割れている骨折です。ここが、腕や指の骨折と決定的に違うところです。
関節の面が段差になったまま治ると、膝の動きと荷重の伝わり方が変わります。そのため、関節面をできるだけ元の形に戻すことが治療の目標になります。
交通事故では、どう起こるのか
膝の外側から強い力が加わったときに起こりやすい骨折です。交通事故では、次のような場面があります。
- バイクや自転車での転倒・衝突——車体と地面に膝が挟まれる
- 歩行者が車のバンパーに膝を当てられる
- 車内で、膝がダッシュボードに強く当たる
- 転倒して、膝から地面に強く着く
いずれも、膝に外から直接、強い力がかかるという点で共通しています。日本整形外科学会も、骨折について「骨折は骨に力がかかって発生します。健康な骨では、かなり大きな力がかからないと骨折しません」としています。
なお、骨全体が弱っていたり、骨の一部が溶けていたりすると、弱い力でも骨折します(病的骨折)。骨粗しょう症のある方では、比較的軽く見える事故でも骨折することがあります。
すぐに確かめるべき合併症があります
脛骨高原骨折で、受傷直後にとくに注意されるのが「コンパートメント症候群」です。
脛骨高原骨折は、前腕の骨(橈骨・尺骨)の骨折や、すねの骨の中央部(骨幹部)の骨折とともに、コンパートメント症候群を起こしやすい骨折として知られています。
コンパートメント症候群とは、筋肉を包む区画の中で圧が高まり、血流と神経が圧迫される状態です。
コンパートメント症候群を治療しないままにすると、筋肉が壊れる(横紋筋融解)、血液中のカリウムが増える、感染を起こすといった状態を招き、関節が固まる、感覚が戻らない、まひが残るといった後遺症につながることがあります。
膝の骨折そのものより、こちらのほうが急を要します。次のような症状があれば、すぐに医療機関へ連絡してください。
- 骨折の程度に比べて、痛みが異常に強い
- 痛みがどんどん強くなる
- 足先のしびれ、感覚の鈍さ
- 足の指が動かしにくい
- 足先の色が悪い、冷たい
- ふくらはぎが硬く張っている
これは、術後やギプス固定中にも起こりえます。「安静にしていれば治る痛み」と我慢しないでください。
どんな症状が出るのか
脛骨高原骨折では、次のような症状が出ます。
- 膝の強い痛み——とくに体重をかけたときに強くなります
- 膝の腫れ——関節の中に血がたまることがあります
- 立てない、歩けない
- 膝の曲げ伸ばしがうまくできない
- 膝の形が変わって見える(変形)
日本整形外科学会は、骨折の症状についてこう書いています。
骨とその周囲は神経と血管が豊富ですので、骨折するとその部位に痛みと腫脹が出現します。骨折がひどい場合は、動かせなくなったり、外見が変形したりします。しかし、単なる打撲や関節脱臼でも似た症状が出るので、診断をはっきりさせるにはX線(レントゲン)写真を撮ります。
打撲でも似た症状が出ます。「膝を打っただけ」と自己判断せず、強く打った、体重をかけられないという場合は受診してください。
なお、ヒビであっても骨折です。学会は、骨が壊れた状態はすべて骨折であり、ヒビも、骨の一部が欠けたり凹んだりした場合も骨折にあたるとしています。ずれの無いヒビだけの骨折は、不全骨折と呼ばれることがあります。
診断には、レントゲンとCTが要ります
日本整形外科学会は、骨折の診断について次のように書いています。
症状を確認し、X線写真を撮ります。大概はこれで診断がつきますが、骨折の転位(ずれ)が無かったり、X線写真に写りにくい骨折の場合は、普通のX線写真だけではなかなか診断できないことがあります。そのような場合にはCT検査が役に立ちます。
脛骨高原骨折では、関節面がどう割れているか、どれくらい落ち込んでいるかを立体的に把握する必要があります。そのため、CTが重要になります。靭帯や半月板の損傷を合併していることもあり、その評価にはMRIが用いられます。
なお、当院が備えているのはレントゲンで、CT・MRIはありません。撮影が必要な場合は、東京品川病院などの医療連携先を当院で手配し、画像データ(CD-ROM)をもとに当院で読影します。関節面の状態を急いで見たい場合は、その日のうちに撮影できることもあります。
治療は、関節面をどう戻すかが軸になります
ずれの小さい骨折では、固定と荷重制限による保存的な治療が選ばれることがあります。一方、関節面が落ち込んでいる、あるいはずれが大きい場合は、手術が検討されます。
日本整形外科学会は、骨折の治療についてこう説明しています。
一般に、骨折部のズレが小さく、骨折部の動きが少なく、骨折部に元気な細胞が多ければ、骨折はつきやすいです。この原則は手術する場合もしない場合も当てはまります。(中略)手術する場合は皮膚を切開し、金属製の板や棒を用いて骨をとめてズレと動きを防ぎますが、骨折部の生きた細胞にも配慮して手術します。
当院では手術は行いません。手術が必要と判断した場合は、連携先の医療機関へご紹介します。そして、手術のあとのリハビリを当院で担当することができます。
荷重とリハビリの管理が、結果を分けます
脛骨高原骨折の経過で難しいのは、「体重をかけてはいけない時期」と「動かしたほうがよい時期」が同時に来ることです。
日本整形外科学会は、骨折についてこう書いています。
ところで、骨折だけが治っても、その周囲が不健康になってはいけません。骨折部がグラグラしない限りは、その周囲の関節や筋肉は動かした方が良い場合が多く、必要以上の安静はかえってよくありません。
つまり、荷重(体重をかけること)を制限しながら、関節は動かしていくという進め方になります。この2つは別のことです。
- 荷重制限——骨がつくまで、体重をかけない・部分的にかける
- 可動域訓練——膝の曲げ伸ばしを、指示された範囲で続ける
- 筋力訓練——太ももの筋肉が落ちるのを防ぐ
「体重をかけてはいけない=動かしてはいけない」と誤解して、膝を固めたまま数週間過ごしてしまうと、あとで動きを戻すのに時間がかかります。
どこまで体重をかけてよいか、どこまで曲げてよいかは、骨折の形と手術の内容によって違います。必ず、担当の医師とリハビリのスタッフの指示に従ってください。
リハビリの段階
膝の骨折後のリハビリは、段階を追って進みます。おおまかな流れをお伝えします。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| ①固定・免荷の時期 | 膝以外の関節を動かす。太ももの筋肉に力を入れる練習(等尺性収縮)。むくみ・血栓の予防 |
| ②可動域を戻す時期 | 指示された範囲で、膝の曲げ伸ばしを少しずつ広げる |
| ③荷重を増やす時期 | 部分荷重から全荷重へ。松葉杖の使い方、歩き方を整える |
| ④筋力と歩行を戻す時期 | 太ももとお尻の筋力、片脚立ちのバランス、歩く距離を伸ばす |
| ⑤生活・仕事に戻す時期 | 階段、しゃがむ動作、通勤、仕事の内容に合わせた練習 |
①の時期にできることを、やっておくかどうかが、その後の回復具合に大きく影響します。「体重をかけられないから何もできない」ではありません。太ももの筋肉は、膝を動かさなくても働かせられます。
また、膝は曲げるより伸ばすほうが戻しにくいことがあります。伸びきらないまま固まると、歩き方が変わり、腰や反対の脚に負担がかかります。まっすぐ伸ばす練習は、根気が要りますが、機能回復において重要です。
当院では、医師、理学療法士・柔道整復師・あんまマッサージ師・鍼灸師・看護師など、国家資格を持ったスタッフによる専任のチームで、患者さん一人ひとりに合わせたリハビリを組み立てます。マンツーマン(予約制)です。
長い目で見たときの注意
関節の中の骨折であるため、将来的に膝の関節が傷んでくることがあります。
日本整形外科学会は、関節のケガ一般について、次のように注意を促しています。
このような関節内の傷は積み重なると、変形性関節症というような(老化現象で関節の軟骨がすり減って関節が変形してくる)状態に至ることがあり、注意を要します。
これは捻挫についての記述ですが、関節面が傷んだ場合に長期的な影響がありうるという点は共通します。
だからこそ、治療が終わったあとも、膝の状態を継続して観察することが大切です。痛みが出てきた、腫れるようになった、歩ける距離が短くなったという変化があれば、ご相談ください。
膝への負担を減らすためにできることも、あわせてお伝えしておきます。
- 太ももの筋力を保つ——膝を支えるのは筋肉です。リハビリが終わっても続けてください
- 体重を増やさない——膝にかかる負担は体重に比例します
- 正座やしゃがむ動作を減らす——膝を深く曲げる姿勢は関節への負担が大きくなります
- 靴を見直す——クッション性のある靴は、着地の衝撃を和らげます
- 痛みが出た日は無理をしない——「動かす」と「無理をする」は別です
これらは、将来の膝を守るための管理です。骨がついたあとからが、長い付き合いの始まりだと考えてください。
後遺障害としての扱い
膝の可動域の制限や、痛み、歩行への影響が残った場合、後遺障害として扱われることがあります。
等級が付くかどうかを、通っている医療機関が決めることはできません。
自賠責保険では、請求書類が損害保険料率算出機構の交通事故調査事務所に送られ、調査事務所が発生状況、支払いの適確性(傷害と事故の因果関係など)、損害額などを公正かつ中立の立場で調査します。医療機関が受け持つのは、後遺障害診断書(後遺症診断書)を書くところまでです。この書類を作れるのは医師だけです。
書くうえで必要なのは、痛みなどの具体的な症状を、レントゲン画像やその他の検査をもとに、整形外科の医師が客観的に記載していることです。
膝の後遺障害診断では、主に以下の項目が記録されます。
- レントゲン画像(骨のつき具合、関節面の段差、金属の位置)
- 可動域(膝を何度まで曲げ伸ばしできるか。実際に角度で測ります)
- 荷重の状態(どの程度まで体重をかけられるようになったか)
- 歩行の状態(杖が必要かどうか、続けて歩ける距離)
- 筋力(太ももの周径を測った左右差など)
- 腫れの程度、関節に水が溜まっていないか
これらは、リハビリに通いながら、そのつど記録していくものです。通院が途切れると、記録も途切れます。
当院でできること
品川大井町整形外科・リハビリクリニックは、整形外科・リハビリテーション科を掲げ、交通事故の診療に力を入れています。手術後のリハビリを引き受けられる体制があります。
- 院内のレントゲン検査による経過の確認
- 国家資格を持つスタッフによるマンツーマンのリハビリ(予約制)
——理学療法士・柔道整復師・あんまマッサージ師・鍼灸師が在籍しています
- 物理療法(牽引・低周波・干渉波・マイクロ波・温熱療法)
- CT・MRIが必要な場合の連携先への予約と、画像データによる診断
- 手術が必要な場合の連携先へのご紹介
- 警察に提出する診断書の当日発行、後遺障害診断書の作成
- 紹介状がなくても転院可能
充実した最新機器と、広いリハビリ設備を備えています。診療時間は月〜金 10:00〜14:00/16:00〜20:00、土 10:00〜14:00(休診は日曜・祝日)。平日は夜20時まで、月〜土は終日リハビリを行っています。大井町駅から徒歩1分です。
※土曜の診療・リハビリは予約制です。受付は診療終了の30分前まで(13:30/19:30)。
▶ 初めての方へ
よくある質問
Q. 手術した病院から、リハビリだけ移ることはできますか。
A. できます。保険会社に新しい医療機関の名前と電話番号を伝えていただければ、転院可能です。前医の紹介状があるとスムーズですが、紹介状がなくても転院いただけます。各種検査結果や手術内容・指示が分かる資料があればお持ちください。手術の内容と、荷重・可動域の指示が分かる資料があると確実です。
Q. 膝が曲がりません。どこまで戻りますか。
A. 骨折の形、手術の内容、経過期間によって異なります。現在の可動域を測り、リハビリの計画を立てたうえでご説明します。見通しを一律にお答えすることはできません。
Q. いつから歩けますか。
A. 荷重を許可する時期は、手術をした医師の判断が優先されます。 当院でリハビリを行う場合も、その指示に沿って進めます。自己判断で体重をかけないでください。
Q. 金属は抜くのですか。
A. 手術をした医療機関の方針によります。抜釘(ばってい)の要否と時期については、そちらでご確認ください。
Q. 将来、変形性膝関節症になりますか。
A. 関節内の傷が積み重なると、変形性関節症に至ることがあるとされています。ただし、必ず起こるわけではありません。経過を見ながら、膝への負担を減らす方法を一緒に考えていきます。
Q. リハビリはどれくらい通うのですか。
A. 交通事故のリハビリは、治療開始の最初の3か月程度は週3回以上(〜5回)をおすすめしています。時間は20分刻みで、目安は40分〜1時間程度です。骨折の場合は、荷重の段階に応じて内容が変わります。
Q. 松葉杖で通院するのが大変です。
A. 当院は大井町駅から徒歩1分です。品川駅・大崎駅・大森駅からは1駅(3分)ですので、通院の負担を軽減しやすい立地です。移動が難しい時期は、通院の間隔と自宅でできる運動の組み合わせについてご相談ください。
Q. 膝に水が溜まります。抜いたほうがよいですか。
A. 溜まる原因を確かめることが先です。診察と画像で状態を見たうえで判断します。自己判断で放置せず、ご相談ください。
Q. 保険会社から「そろそろ治療の終了を」と言われました。
A. 本来は治るまでが治療期間です。症状の改善・回復が見込める場合、医師の医学的判断により治療を継続することもできます。まずは担当の医師にご相談ください。
Q. 仕事に復帰できますか。
A. 仕事の内容によって、必要な回復の程度が変わります。立ち仕事なのか、しゃがむ動作があるのか、階段の上り下りがあるのか——具体的にお伝えいただければ、それに合わせた目標でリハビリを組み立てます。
まとめ
- 脛骨高原(プラトー)骨折は、関節腔(膝の関節の中)にまで及ぶ脛骨近位端骨折です
- 交通事故では、バイクの転倒、バンパーとの衝突、ダッシュボードへの打撲などで起こります
- コンパートメント症候群のリスクが高い骨折です。痛みが異常に強い、しびれ、足先の色が悪いなどがあれば、すぐに連絡してください
- 診断にはレントゲンに加えてCTが役立ちます。靭帯や半月板の評価にはMRIを用います
- 治療は関節面をどう戻すかが軸です。ずれが大きければ手術が検討されます
- 荷重制限を守ることと、関節を動かすこと——この2つは別のことです
- 関節内の傷は、長期的に変形性関節症につながることがあります。経過を見続けてください
- 後遺障害の等級を決めるのは損害保険料率算出機構の調査事務所です。医療機関は診断書を作成します
膝の骨折のあとでリハビリ先をお探しの方、経過が気になる方は、ご相談ください。手術をした病院とは別に、通いやすい場所でリハビリを続ける選択肢もあります。紹介状がなくても転院できます。
高原骨折のあとの受診や通院は、大井町駅徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックにご相談ください。
参考文献
- 日本整形外科学会「骨折」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html
- 日本整形外科学会「捻挫」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/sprain.html
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「コンパートメント症候群」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-外傷と中毒/骨折/コンパートメント症候群