マレットフィンガー(槌指)と後遺障害|指が伸びないとき、まず確かめること
- 2026年10月26日
- 交通事故
事故のときに指をぶつけた。第1関節が曲がったままで、自分では伸ばせない。押せば伸びるので「そのうち治る」と思って2週間が過ぎた——このような経過でご相談にみえる方がいらっしゃいます。
この状態には名前があります。マレット変形(槌指/マレットフィンガー)です。そして、放置すると変形が残ることがあります。
大事なのは、まずレントゲンを撮って、腱の問題なのか骨折なのかを見分けることです。骨折の有無で治療法が変わるためです。
この記事は、大井町駅から徒歩1分の品川大井町整形外科・リハビリクリニックが、交通事故の診療の現場から「マレットフィンガー(槌指)と後遺障害」について整理したものです。
なお、指の状態や経過には個人差があります。具体的な治療法は診察とレントゲン検査によって決まります。
マレット変形(槌指)とは
日本整形外科学会の説明を引きます。
指の第1関節が木槌のように曲がった状態になるので、マレット変形と呼ばれます。
「第1関節」とは、指先にいちばん近い関節(DIP関節)のことです。ここが曲がったまま戻らなくなります。
症状には、はっきりした特徴があります。
第1関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で自分で伸ばそうと思っても伸びません。しかし、他動伸展は可能で手伝って伸ばすと伸びます。
自分では伸ばせないが、反対の手で押せば伸びる——これが典型的な状態です。「押せば伸びるから大丈夫」と考えてしまうのは、この特徴のためです。
原因は、突き指の一種とされています。ボールなどが指先に当たったときなどに起こります。交通事故でも、指先に強い外力がかかる場面で生じます。
タイプは2つ。ここで治療が分かれます

学会は、病態を2つに分けています。
| タイプ | 何が起きているか |
|---|---|
| 腱性マレット指(腱性マレットフィンガー) | 指を伸ばす伸筋腱が切れたために生じるもの |
| 骨性マレット指(骨性マレットフィンガー) | 第1関節の関節内骨折が生じ、伸筋腱がついている骨がずれた状態になったもの |
見た目はどちらも「第1関節が曲がったまま」です。しかし、中で起きていることが違います。
そして、治療も違います。
腱性マレット指では一般に装具などの保存的療法が行われます。骨折を伴う骨性マレット指の場合には、手術を必要とすることがあります。
つまり、どちらなのかを見分けないと、治療方針が決まりません。
なぜレントゲンが必要なのか
学会は、診断についてこう書いています。
指の形状が第1関節で曲がっていれば、マレット変形といえますが、腱性マレット変形か骨性マレット変形かの診断が重要になります。マレット変形を診断するには、X線(レントゲン)撮影が重要です。骨折の有無で治療法が変わるからです。
見た目だけで判断することはできません。関節の中に生じた小さな骨折は、外からは見えないためです。
なお、ヒビも骨折の一種です。学会は、骨が壊れた状態はすべて骨折であり、ヒビも、骨の一部が欠けた場合も、凹んだ場合も骨折にあたるとしています。
「たかが突き指」と考えて受診しないでいると、関節の中の骨折を見逃したまま時間が経ってしまいます。
交通事故では、どんなときに起こるのか
指のケガは、車の事故では見落とされがちです。首や腰の痛みのほうが強く、指の症状があとまわしになりやすいためです。
交通事故で起こりうる場面としては、次のようなものがあります。
- ハンドルを握っていて、衝撃で指を突いた
- ダッシュボードや窓枠に指をぶつけた
- 急ブレーキで前に投げ出され、手をついた
- バイクや自転車で転倒し、地面に手をついた
- 荷物や同乗者をとっさに押さえようとして、指先に力がかかった
- シートベルトやドアに指が挟まった
いずれも、指先に外から力が加わるという点で共通しています。
そして、こういう経過をたどります。事故の直後は首や腰が痛くて指どころではない。数日して落ち着いてくると、「そういえば指が伸びない」と気づく——。
気づいた時点で、必ず伝えてください。診察のときに「首が痛い」だけを話して指のことを言わないと、記録に残りません。指のことは、痛みが軽くても必ず口に出してください。 首や腰の陰に隠れて申告されないまま時間が経つと、事故によるものだと示す材料が残りません。
放置すると、どうなるのか
「押せば伸びるから」と様子を見てしまう方が多いのが、このケガの特徴です。
しかし、伸筋腱が切れている、あるいは骨がずれているという状態が続くと、指を自分で伸ばせないまま固まっていくことがあります。
学会も、治療について「病態や受傷後の経過期間によって治療法は異なります」としています。時間が経つほど、選べる方法が限られてくるということです。
とくに、次のような影響が考えられます。
- 第1関節が曲がったままの変形が残る
- 指をまっすぐ伸ばせない(可動域の制限)
- 物をつかむ、キーボードを打つ、ボタンを留める、細かい作業をするといった日常動作への支障
- 見た目の変形
指は、日常生活のあらゆる場面で使う部位です。「1本の指の第1関節」と思っていると、あとで困ります。
治療の流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ①診察 | 指の形、腫れ、痛みの場所を確認します。自動伸展と他動伸展を確かめます |
| ②レントゲン検査 | 腱性か骨性かを見分けます。関節面のずれの程度も確認します |
| ③方針の決定 | 腱性なら装具などの保存的療法、骨性なら手術を含めて検討します |
| ④固定または手術 | 保存的療法の場合は装具を作り、期間を決めて固定します |
| ⑤経過の確認 | 定期的に受診いただき、状態を確認します |
| ⑥リハビリ | 固定を外したあと、動かせる範囲を戻していきます |
このうち、⑥のリハビリを軽く見ないでください。固定していた期間、関節は動いていません。そのまま日常に戻すと、動かしにくさが残ることがあります。
日本整形外科学会は、捻挫からの復帰について、ブランクの間に低下した運動機能を再び獲得していくためのリハビリテーションが必要であるとしています。指も同じです。
当院では、国家資格を持つスタッフによるマンツーマンのリハビリ(予約制)を行っています。指の動きを戻す訓練も、その中で行います。
装具の管理が、そのまま結果になります
腱性マレット指では、装具などの保存的療法が行われます。
装具は、指示された期間、外さずに着け続けてください。
伸筋腱が治るには、切れた端どうしが近づいた状態で保たれている必要があります。途中で外して指を曲げてしまうと、そこまでの時間がやり直しになることがあります。
「入浴のときだけ」「寝るときは外して」といった自己判断も、避けてください。外してよいかどうか、どう洗うかは、診察でお伝えします。
装具をつけている間に気をつけていただきたいのは、次の点です。
- 指先の色が悪くなっていないか(きつすぎるサイン)
- しびれや強い痛みが出ていないか
- 皮膚がふやけたり、かぶれたりしていないか
- 装具がゆるんでいないか(ゆるむと固定になりません)
これらに気づいたら、次の受診を待たずにご連絡ください。装具は、正しい位置で保たれていて初めて意味があります。
逆に、装具をつけている間も、他の関節は動かします。日本整形外科学会は、骨折の治療について「骨折部がグラグラしない限りは、その周囲の関節や筋肉は動かした方が良い場合が多く、必要以上の安静はかえってよくありません」としています。固定する場所と動かす場所を分けて考えます。
後遺障害として、どう扱われるのか
指の変形や可動域の制限が残った場合、後遺障害として扱われることがあります。
等級が付くかどうかを、診てもらった医療機関が決めるわけではありません。
自賠責保険では、請求書類が損害保険会社(組合)から損害保険料率算出機構の交通事故調査事務所に送られ、調査事務所が交通事故の発生状況、支払いの適確性(傷害と事故の因果関係など)、発生した損害額などを、公正かつ中立の立場で調査します。その結果をもとに、損害保険会社が支払額を決定します。
医療機関の役割は、後遺障害診断書(後遺症診断書)を作成することまでです。この書類は、医師でなければ作成できません。
作成にあたっては、痛みなどの具体的な症状が、レントゲン画像やその他の検査などで、整形外科医師により客観的に記載されていることが必要です。
指の場合、何が記録されるのか
指のケガでは、次のようなことが診断書の材料になります。
- レントゲン画像(骨折の有無、癒合の状態、関節面のずれ)
- 自動伸展の可否(自分の力で伸ばせるか)
- 他動伸展の可否(手伝ってもらえば伸びるか)
- 可動域(第1関節・第2関節を、何度まで曲げ伸ばしできるか)
- 変形の程度(指がどれくらい曲がったままか)
- 握力の測定値や、細かい作業への影響
これらは、診察のたびに確認して記録していくものです。診断書を書く段階で急に作れるものではありません。
とくに可動域は、角度を測って記録します。受傷からの経過の中で、どこまで戻り、どこで止まったのかが分かる形で残していきます。通院が途切れると、この記録も途切れます。
指のケガで、あわせて確かめること
第1関節が伸びないという症状だけでなく、手や指には似た症状を起こす別のケガがあります。診察では、これらとも区別します。
| 状態 | 特徴 |
|---|---|
| 突き指(一般的な捻挫) | 関節の腫れと痛み。X線で異常がない関節のケガは捻挫という診断になります |
| 指の骨折 | 第1関節以外の場所の骨折。ヒビも骨折です |
| 脱臼 | 関節がずれた状態。見た目の変形が強く出ます |
| 他の腱の損傷 | 曲げる側の腱が切れると、逆に曲げられなくなります |
そして、日本整形外科学会は捻挫について、こう注意を促しています。
痛みを感じにくい靭帯もあるため、あまり痛くないから大丈夫と考えてはいけません。
さらに、
多くの捻挫では、ケガの後1〜2ヵ月もすると強い痛みは取れ、日常生活に支障はなくなります。(中略)したがって重症のケガという感がなく、ついつい無理をしてしまい、その結果関節内に二次的な傷が進行することがあります。
痛みが引いたことと、治ったことは同じではありません。指の場合はとくに、日常で使い続けてしまうため、無理が重なりやすい部位です。
「事故から時間が経ってしまった」という方へ
受診が遅れてしまった方も、いらっしゃると思います。
まず、いま受診してください。遅れたことは変えられませんが、現在の状態を確かめないと、次の手が決まりません。
時間が経っていても、取れる方法はあります。詳しくは整形外科でご相談ください。
また、交通事故から一定の時間が経過してしまうと、事故と現在の症状の関連性や因果関係が認められなくなってしまいます。受診の記録がないまま時間が過ぎることは、この点でも不利になります。
手の外科的な処置が必要な場合
骨性マレット指では、手術を必要とすることがあります。また、経過によっては専門的な処置が必要になることもあります。
当院では、診察とレントゲン検査で状態を確かめ、治療方針をご提案します。手術が必要と判断した場合には、連携先の医療機関へご紹介します。
なお、院内にあるのはレントゲンで、CT・MRIは置いていません。必要な場合は、東京品川病院などの医療連携先を当院で手配し、画像データ(CD-ROM)をもとに当院で読影します。
当院でできること
品川大井町整形外科・リハビリクリニックは、整形外科・リハビリテーション科を掲げ、交通事故の診療に力を入れています。
- 院内のレントゲン検査による、腱性・骨性の見分け
- 装具による保存的療法と、その管理
- 国家資格を持つスタッフによるマンツーマンのリハビリ(予約制)
- 手術が必要な場合の連携先へのご紹介
- 警察に提出する診断書の当日発行、後遺障害診断書の作成
- 交通事故の当日初診予約(直通ダイヤル 03-6433-9670/WEBでも可。自賠責保険のみ)
- 紹介状がなくても転院可能
診療時間は月〜金 10:00〜14:00/16:00〜20:00、土 10:00〜14:00(休診は日曜・祝日)。平日は夜20時まで診療しています。大井町駅から徒歩1分です。
※土曜の診療・リハビリは予約制です。受付は診療終了の30分前まで(午前診療13:30/午後診療19:30)。
▶ 整形外科
▶ 初めての方へ
よくある質問
Q. 押せば伸びるので、大丈夫ではないですか。
A. 他動伸展が可能なのは、マレット変形の典型的な特徴です。「押せば伸びる」ことは、治っている証拠ではありません。自分で伸ばせるかどうか(自動伸展)が問題です。
Q. 突き指の一種と聞きました。冷やして様子を見ればよいですか。
A. レントゲンを撮るまでは判断できません。骨折を伴っている場合、様子を見ている間に治療の選択肢が減ることがあります。
Q. 装具はいつまで着けるのですか。
A. タイプと経過によります。途中で自己判断で外すと、それまでの経過がやり直しになることがありますので、必ず診察でご確認ください。
Q. 仕事でパソコンを使います。装具をしたままで大丈夫ですか。
A. 仕事の内容に合わせて調整できることがあります。具体的にどういう作業をするのかをお伝えください。
Q. 指の変形は元に戻りますか。
A. タイプ、受傷からの期間、治療の経過によって異なります。現在の状態を確かめたうえでご説明します。見通しについては、診察でご相談ください。
Q. 後遺障害の等級はどれくらいになりますか。
A. 等級の認定は、損害保険料率算出機構の調査事務所が調査したうえで判断します。医療機関では判断できません。補償の金額についても、保険会社等にご確認ください。
Q. 装具をつけたまま運転してもよいですか。
A. ハンドル操作に影響する場合があります。装具の位置や指の状態によりますので、必ず診察でご確認ください。安全に関わることですので、自己判断は避けてください。
Q. 別の病院で「そのうち治る」と言われました。
A. レントゲンを撮ったうえでの判断であれば、経過を見るという方針もあります。ただし、撮っていないのであれば、まず撮ってもらってください。骨折の有無で治療法が変わります。当院では紹介状がなくても受診いただけます。
Q. 利き手の指です。仕事に支障が出ています。
A. 仕事への支障は、診断書に記載される内容にも関わります。どういう作業ができなくなっているのかを、具体的にお伝えください。あわせて、仕事を続けながらできる固定の方法もご相談します。
Q. 子どもの指が同じような状態です。
A. お子さんの骨にはX線写真に写らない部分があり個人差が大きいため、必要に応じてケガをしていない側のX線写真も撮って比較することがあります。早めにご相談ください。
まとめ
- マレット変形(槌指)は、指の第1関節が木槌のように曲がった状態です
- 自分では伸ばせないが、手伝えば伸びる——これが典型的な特徴です。「押せば伸びる」は治った証拠ではありません
- タイプは、腱性(伸筋腱が切れた状態)と骨性(第1関節の関節内骨折)の2つがあります。
- 見分けにはX線撮影が重要です。骨折の有無で治療法が変わります
- 腱性は装具などの保存的療法、骨性は手術を必要とすることがあります
- 装具は、指示された期間、外さずに着け続けてください
- 後遺障害の等級を決めるのは損害保険料率算出機構の調査事務所。医療機関は診断書を作成します
- 受診が遅れても、いま受診してください。現在の状態が分からないと、次の手が決まりません
指が伸びない状態が続いている方は、整形外科にご相談ください。小さなケガに見えて、放っておくと戻しにくいのがこの部位です。レントゲンを撮るところから始めましょう。当院は大井町駅から徒歩1分、平日は夜20時まで診療しています。
参考文献
- 日本整形外科学会「マレット変形(槌指)」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/mallet_finger.html
- 日本整形外科学会「骨折」 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/bone_fracture.html