交通事故の診断書はいつ、どこでもらう?取得から提出までの手順
- 2026年7月3日
- 交通事故
交通事故に遭ったあと、「診断書をもらってきてください」と警察や保険会社から言われ、どう動けばいいか迷っている方は少なくありません。診断書は事故によるケガを公的に証明する書類であり、取得のタイミングや記載内容が、その後の補償手続き全体に影響します。この記事では、整形外科専門医の立場から、診断書の取得から提出までに知っておくべきことを順を追って説明します。
交通事故の診断書とは何か
交通事故の診断書は、事故で負ったケガの内容や治療の見通しを医師が記載する公的な医療文書です。提出先に応じて求められる書式や記載内容が異なるため、まず種類を把握しておく必要があります。
診断書の役割
交通事故の診断書は、「この事故でケガをした」という事実を医学的に証明する書類です。事故直後に目立った症状がなくても、数日後にむちうちや腰痛などの症状が出ることは珍しくありません。早い段階で受診し診断書を取得しておくことが、事故とケガの因果関係を証明する出発点になります。
警察に診断書を提出しなければ、その事故は「物損事故」として処理されます。物損事故のままでは、治療費・慰謝料・休業損害といったケガに対する補償を受ける手続きが難しくなります。診断書は補償を受けるための入口であり、取得が遅れるほど「本当に事故でケガをしたのか」という因果関係の証明が難しくなるため、受診の先延ばしは避けてください。
交通事故で使われる診断書の種類
交通事故に関連する診断書は、主に3つの種類があります。
| 種類 | 提出先 | 主な記載内容 |
|---|---|---|
| 警察提出用の診断書 | 管轄の警察署 | 傷病名、治療見込み期間(全治日数) |
| 保険会社提出用の診断書 | 加害者側の保険会社 | 傷病名、症状の経過、治療内容、通院日数 |
| 後遺障害診断書 | 自賠責保険(損害保険料率算出機構) | 残存症状、検査所見、症状固定日 |
警察提出用は人身事故への切り替えに必要な書類です。保険会社提出用は治療費や慰謝料の請求に使われ、治療の経過を含むためやや詳細な内容になります。
後遺障害診断書は、治療を続けても症状が改善しなくなった時点(症状固定)で作成される書類で、後遺障害の等級認定を申請する際に必要です。
交通事故の診断書はどこでもらえるか
診断書を発行できる施設とできない施設があります。事故後にどこを受診するかで、その後の手続きの進めやすさが変わります。
診断書を作成できるのは医師だけ
診断書は医師だけが作成できる書類です。整形外科をはじめとする病院・クリニックで発行してもらえます。接骨院(整骨院)は柔道整復師が施術を行う施設であり、医師が在籍していないため、診断書を発行することはできません。
事故後に接骨院だけに通っていた場合、いざ診断書が必要になっても対応できません。交通事故に遭ったら、まず整形外科を受診して診断書を取得し、そのうえで必要に応じて接骨院でのリハビリを併用するという順序が重要です。
整形外科を選ぶ理由
交通事故のケガは、むちうち(頸椎捻挫)、腰椎捻挫、打撲、骨折など、筋肉・骨・関節に関わるものが大半を占めます。これらは整形外科の専門領域です。レントゲンやMRIなどの画像検査を受けられる医療機関であれば、骨折や靭帯損傷の有無を客観的に確認でき、その結果を診断書に正確に反映できます。
内科や外科でも診断書作成は不可能ではありませんが、むちうちのような運動器の症状に対する検査や治療は整形外科が専門です。後遺障害診断書を作成する段階になったとき、継続的に診てきた整形外科医がいるかどうかで、記載の精度に差が出ます。
診断書を取得するまでの流れ
交通事故に遭った日から診断書を手にするまでの流れを、時系列で説明します。
事故当日にやるべきこと
まず警察に連絡し、事故の届け出を行います。ケガの自覚があれば「人身事故」として届け出ますが、この時点では痛みを感じないケースも多いため、ひとまず物損事故として届け出ていても後から切り替えが可能です。
警察への届け出と並行して、できるだけ当日中に整形外科を受診してください。事故当日は興奮状態にあるため、痛みを感じにくいことがあります。受診が遅れるほど「事故とケガの因果関係」を医学的に説明しにくくなり、診断書の記載にも影響します。
受診時に医師に伝えること
整形外科を受診する際は、以下の情報を医師にできるだけ正確に伝えてください。
- 事故の発生日時と状況(追突、正面衝突、自転車転倒など)
- 衝撃を受けた体の部位
- 現在の症状(痛み、しびれ、動かしにくさなど)
- 事故後に症状が変化した経緯
これらの情報が診断書に反映されます。「大したことない」と遠慮して症状を過少に伝えてしまうと、実際の症状と診断書の内容にずれが生じ、後の補償手続きに支障をきたすことがあります。感じている症状は、軽いものであっても正直に伝えてください。
診断書はいつ受け取れるか
警察提出用の診断書であれば、初回受診の当日に発行できるケースが多いです。レントゲン撮影と診察を行い、傷病名と治療見込み期間を記載して当日中にお渡しできます。
保険会社提出用の診断書は、保険会社所定の書式への記入が必要なため、数日〜1週間程度かかることがあります。後遺障害診断書は症状固定後に作成するもので、事故直後には発行しません。
交通事故の診断書の提出先と期限
診断書を取得したら、速やかに適切な先へ提出します。提出先ごとに目的と留意点が異なるので整理していきます。
警察への提出
警察に診断書を提出することで、物損事故から人身事故への切り替えが行われます。人身事故になると、警察が事故現場の実況見分(事故状況の詳細な調査)を行い、実況見分調書を作成します。この調書は過失割合の判断材料になるため、適正な補償を受けるうえで重要な書類です。
提出先は事故を処理した管轄の警察署で、診断書の原本を持参します。法律上の厳密な期限はないものの、事故から10日以内の提出が望ましいです。時間が経つほど「事故とケガの因果関係が不明確」と判断されるリスクが高まるため、早めに提出してください。
保険会社への提出
加害者側の任意保険会社に診断書を提出することで、治療費・慰謝料・休業損害などの損害賠償請求手続きが進みます。保険会社から所定の書式が送られてくるので、それを医療機関に渡して記入を依頼する形です。
なお、加害者側の保険会社が「一括対応」(治療費を保険会社が直接医療機関に支払う方式)をしている場合は、保険会社が医療機関から直接診断書を取り寄せるため、自分で提出する必要がないこともあります。保険会社の担当者に確認してください。
後遺障害の認定申請
治療を続けても症状が改善しなくなった時点で医師が「症状固定」と判断した場合、後遺障害診断書を作成し、自賠責保険を通じて後遺障害の等級認定を申請します。この診断書は治療経過を踏まえた詳細な記載が求められるため、事故直後から一貫して同じ整形外科で治療を受けていると、医師が正確な経過を記載しやすくなります。
診断書に書かれる「全治日数」の意味
警察提出用の診断書には「全治2週間」「加療10日を要する見込み」といった治療期間が記載されます。この日数を見て「2週間で治療が終わるのか」と不安に感じる方がいますが、全治日数は「治療の見通しの目安」であり、実際の治療期間を制限するものではありません。
医師は事故直後の初回診察の時点で、最低限必要な治療期間を見込みとして記載します。むちうちなどの症状は経過とともに変化するため、初回の診断書で正確な治療期間を特定することは難しく、実際には数ヶ月にわたって通院する方も多くいます。
全治日数が短く書かれているからといって、それ以上の通院ができなくなるわけではありません。症状が続いている限り、医師の判断のもとで治療を継続できます。
また、警察提出用の診断書に記載される全治日数は、加害者の行政処分(違反点数の加算)に影響します。治療見込み期間が15日以上になると付加点数が変わるため、初回の診断書では「全治2週間」と記載されることが多い傾向にあります。これは医学的な見立てに加え、初回時点で確定できる範囲を記載するという実務的な理由もあります。
診断書の費用と負担先
診断書の作成には文書料がかかります。費用は医療機関によって異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。
| 診断書の種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| 警察提出用(通常の診断書) | 3,000〜5,000円程度 |
| 保険会社提出用 | 5,000円前後 |
| 後遺障害診断書 | 5,000〜10,000円程度 |
診断書の作成費用は、交通事故による損害(文書料)として加害者側に請求できます。領収書を保管しておいてください。自賠責保険の範囲内で補償される費用です。
初回受診時は一時的に自己負担が発生する場合もありますが、加害者側の任意保険会社による「一括対応」(保険会社が医療機関に治療費を直接支払う仕組み)が成立すれば、以後は窓口負担なしで通院できます。
加害者が任意保険に未加入で自賠責保険のみの場合でも、医療機関によっては自賠責への直接請求に対応できることがあります。受診前に電話で交通事故の治療を受けたい旨を伝え、対応可否を確認しておくとスムーズです。
交通事故の診断書に関するよくある質問
事故から数日経ってから痛みが出た場合でも診断書はもらえますか?
もらえます。むちうちなどの症状は事故から2〜3日後に出ることが珍しくなく、医師もそのことを理解しています。ただし、事故から受診までの期間が空くほど因果関係の証明が難しくなるため、症状が出たらすぐに整形外科を受診してください。
診断書は何通必要ですか?複数の提出先分をまとめて依頼できますか?
警察用と保険会社用で最低2通は必要になります。まとめて依頼することは可能で、初回受診時に「警察提出用と保険会社用の両方をお願いします」と受付に伝えてください。ただし保険会社提出用は所定の書式があるため、保険会社から書式が届いてから改めて作成を依頼する流れになることもあります。
文書料は通数分かかりますが、いずれも交通事故の損害として加害者側に請求できます。
加害者から「診断書を出さないでほしい」と言われたらどうすればいいですか?
診断書を警察に提出するかどうかは被害者の判断です。加害者側の都合で提出を控える必要はありません。人身事故として届け出なければ実況見分調書が作成されず、過失割合の交渉で不利になる可能性があります。
ケガの補償を適切に受けるためにも、診断書の提出を検討してください。
まとめ
交通事故に遭ったら、まず整形外科を受診して診断書を取得することが、その後の補償手続き全体の土台になります。受診は事故当日、遅くとも数日以内が目安です。診断書には警察提出用・保険会社提出用・後遺障害診断書の3種類があり、提出先ごとに目的が異なります。
品川大井町整形外科・リハビリクリニックでは、交通事故によるケガの診察・検査から診断書の作成、リハビリテーションまで一貫して対応しています。院内でのレントゲン検査のほか、提携先の病院でのMRI・CT撮影にも対応しており、自賠責保険での治療が可能です。事故に遭われた方は、お早めにご相談ください。