交通事故で全治2週間の診断とされたら。実際の治療期間と通院で知っておくべきこと
- 2026年7月3日
- 交通事故
交通事故に遭い、病院で「全治2週間」という診断書を受け取ると、多くの方は「2週間で治るのか」「それ以上通院できないのか」と不安を感じます。実はこの「全治2週間」という記載は、体が完全に回復するまでの期間を意味するものではありません。診断書の仕組みと、実際にどのくらいの治療が必要になるかを整形外科の視点からお伝えします。
交通事故の「全治2週間」は治療期間の制限ではない
診断書に書かれた「全治2週間」の意味を正しく理解しておくと、その後の通院や補償に関する判断がしやすくなります。
診断書の全治日数は行政処分の目安として記載される
交通事故で病院を受診すると、警察へ提出するための診断書が発行されます。この診断書に記載される全治日数は、加害者に対する行政処分を決めるための目安であり、体が治るまでの医学的な予測ではありません。
警視庁が公開している交通事故の付加点数を見ると、被害者の全治日数が15日を境に処分の重さが大きく変わります。
| 被害者の全治日数 | 加害者の過失が重い場合 | その他の場合 |
|---|---|---|
| 15日未満 | 3点 | 2点 |
| 15日以上30日未満 | 6点 | 4点 |
全治15日未満であれば付加点数は2〜3点ですが、15日以上になると4〜6点に跳ね上がり、前歴がない方でも免許停止処分の対象になります。こうした背景があるため、骨折など明らかに重いけがを除けば、医師は初診時に「全治2週間」と記載することが多いのです。
全治2週間を超えて通院を続けてよい
診断書に「全治2週間」と書かれていても、痛みや症状が残っている限り通院を続けることができます。全治日数はあくまで行政処分上の目安であり、「2週間を超えたから治療費が出なくなる」ということはありません。加害者側の保険会社も、診断書の全治日数だけを理由に治療費の支払いを打ち切ることは通常ありません。
むしろ注意すべきは、痛みが残っているのに自己判断で通院をやめてしまうことです。治療を途中でやめると、後から症状が長引いた場合に適切な補償を受けにくくなります。体に違和感がある間は、整形外科の医師と相談しながら通院を継続してください。
全治2週間と診断される交通事故の怪我の種類
全治2週間の診断書が出るのは、レントゲンやCTで骨の異常が確認されにくい軟部組織の損傷が中心です。
頚椎捻挫(むちうち)
交通事故で最も多い怪我が頚椎捻挫、いわゆるむちうちです。追突事故などで首に急激な力が加わり、首の筋肉や靭帯が傷つくことで起こります。首の痛み、動かしにくさ、頭痛、めまい、手のしびれなど症状は幅広く、レントゲンでは異常が見えにくいため「全治2週間」と記載されやすいものの、実際には3〜6ヶ月の治療が必要になるケースも珍しくありません。
事故直後は興奮状態で痛みを感じにくく、翌日以降に症状が出るのがむちうちの特徴です。「その場では大丈夫だった」という方ほど受診が遅れやすいため、事故後は痛みの有無にかかわらず早めに整形外科を受診することが大切です。
腰椎捻挫
シートベルトで体が固定された状態で衝撃を受けると、腰の筋肉や靭帯に過度な負荷がかかり、腰椎捻挫を起こします。腰の痛みに加えて、太ももやふくらはぎにしびれが出る場合は、腰椎の周囲にある神経が圧迫されている可能性があり、MRIでの精密検査が必要です。軽度であれば数週間で改善しますが、神経症状を伴う場合は数ヶ月の治療とリハビリが必要になります。
打撲・挫傷
ハンドルやドアに体をぶつけることで起こる打撲や、皮膚表面の切り傷(挫傷)も全治2週間と診断されることが多い怪我です。打撲は見た目の腫れや内出血が目立つ一方、骨や関節に問題がなければ比較的早く改善します。ただし、胸部や腹部への強い打撲は内臓損傷の可能性があるため、痛みが引かない場合や呼吸時に痛む場合は必ず医師に伝えてください。
交通事故で全治2週間の診断後、実際の治療期間はどのくらいか
交通事故による実際の通院期間は、怪我の種類と重さによって大きく異なります。
むちうちは3〜6ヶ月かかることが多い
むちうち(頚椎捻挫)は、診断書の全治日数と実際の治療期間が最も乖離しやすい怪我です。軽度でも1〜2ヶ月、中程度以上では3〜6ヶ月の通院が必要になるのが一般的です。首の筋肉や靭帯は日常生活で常に使う部位であるため、安静だけでは回復しにくく、リハビリを組み合わせて段階的に回復を図ります。
6ヶ月通院しても症状が残る場合は「症状固定」といって、これ以上治療を続けても大きな改善が見込めない状態と判断されることがあります。この時点で後遺障害の認定申請を検討することになるため、治療の経過記録を整形外科できちんと残しておくことが重要です。
打撲・軽い捻挫は2〜4週間が目安
骨や神経に問題がない打撲や軽い捻挫であれば、2〜4週間で日常生活に支障がない程度まで回復します。ただし、痛みが完全に消えるまでにはもう少しかかることもあり、仕事の内容(デスクワークか肉体労働か)によって復帰のタイミングは変わります。
通院が途切れると不利になる
治療期間中に注意すべきは、通院の間隔を2週間以上空けないことです。通院の空白がおおむね2週間以上あると、保険会社から「もう治ったのではないか」と判断される材料になります。特にむちうちのように画像では異常が映りにくい怪我の場合、通院の記録が「まだ治療が必要である」ことを示す重要な根拠になります。
痛みが軽減してきた段階でも、医師が治療終了を判断するまでは定期的に受診してください。
交通事故後に整形外科で受ける検査と治療
交通事故の怪我は、初診時のレントゲンだけでは全体像がつかめないことがあります。段階的に検査と治療を進めるのが整形外科での標準的な流れです。
まずはレントゲンとMRIで正確に診断する
初診ではまずレントゲンで骨折の有無を確認します。骨に異常がなくても痛みやしびれが続く場合は、MRIで筋肉・靭帯・椎間板・神経の状態を確認します。MRIはレントゲンでは見えない軟部組織の損傷を映し出すため、むちうちや腰椎捻挫の正確な診断に欠かせない検査です。
交通事故の場合、初診の段階で「異常なし」と言われても、1〜2週間後にMRIを撮ると椎間板の膨らみや靭帯の損傷が見つかることがあります。事故直後に症状が軽くても、経過をみながら必要な検査を追加していくことが大切です。
リハビリテーションで段階的に回復を目指す
痛みが落ち着いてきたら、理学療法士によるリハビリテーションを開始します。むちうちであれば、首や肩周りの筋肉をほぐすストレッチや、首を支える筋力を取り戻すための運動療法、腰椎捻挫であれば体幹の安定性を高めるトレーニングを段階的に進めます。
リハビリの頻度は症状や回復の進み具合によりますが、急性期を過ぎた後は週2〜3回の通院を目安に、医師と理学療法士が連携して回復プログラムを組みます。「痛みが引いたからもう大丈夫」と自己判断せず、筋力や可動域が事故前の状態に近づくまでリハビリを継続することが、再発や後遺症を防ぐポイントです。
投薬・物理療法で痛みをコントロールする
急性期の強い痛みに対しては、鎮痛剤の処方や、患部への電気療法・温熱療法などの物理療法を組み合わせます。痛みが強いまま無理に動くと筋肉が防御的に硬くなり、かえって回復を遅らせます。まず痛みを適切にコントロールし、体が動かせる状態を作ってからリハビリに移行する、という順序が大切です。
交通事故の通院で知っておきたい費用と保険の仕組み
交通事故の治療費は、加害者側の自賠責保険・任意保険から支払われる仕組みになっており、被害者が窓口で負担することなく通院できるのが基本です。
自賠責保険で治療費は原則カバーされる
交通事故の被害者は、加害者が加入している自賠責保険(強制保険)から治療費・慰謝料・休業損害の補償を受けられます。自賠責保険の補償上限は傷害部分で120万円で、この範囲内であれば窓口での自己負担なく治療を受けられるのが一般的です。
加害者側が任意保険に加入している場合は、保険会社が医療機関に直接治療費を支払う「一括対応」が行われるため、被害者が立て替える必要はありません。
120万円を超える治療費がかかる場合や、過失割合が問題になるケースでは、健康保険を使って自己負担を抑える方法もあります。交通事故で健康保険を使う場合は、加入している健康保険組合への届出(「第三者行為による傷病届」)が必要です。
慰謝料は「実際の通院期間」で計算される
全治2週間の診断書が出ても、慰謝料は診断書の全治日数ではなく実際に治療を受けた期間をもとに計算されます。自賠責保険では、「治療を開始した日から終了した日までの総日数」と「実際に通院した日数の2倍」のうち、少ない方に1日4,300円を掛けて算出します。
たとえば通院期間が3ヶ月(90日)、実際の通院日数が30日の場合は、次のように計算します。
| 比較する数値 | 日数 |
|---|---|
| ①通院期間 | 90日 |
| ②実通院日数×2(30日×2) | 60日 |
このうち少ない方の②60日が採用され、60日×4,300円=258,000円が自賠責基準での慰謝料の目安になります。弁護士基準ではさらに高い金額が認められる場合もあるため、金額に納得がいかない場合は弁護士への相談も選択肢に入ります。
交通事故で全治2週間と診断された場合のよくある質問
全治2週間の診断でも仕事は休めますか?
休むことは可能です。休業の必要性は怪我の程度や仕事内容によって異なりますが、例えばむちうちの急性期(事故後1〜2週間)は安静が優先されます。仕事を休んだ場合は「休業損害」として補償の対象になるため、医師に相談のうえ、必要な期間は無理をせず休んでください。
休業損害を請求するには医師の診断書が必要です。
整骨院にも通っていいですか?
整骨院(接骨院)への通院自体は可能ですが、交通事故の治療記録として保険会社や後遺障害認定の場面で重視されるのは整形外科の診療記録です。整骨院に通う場合でも、並行して整形外科への定期的な受診を続けてください。整骨院だけの通院では、治療の必要性を客観的に証明しにくくなります。
全治2週間の診断で後遺障害は認められますか?
初診の診断書が「全治2週間」であっても、後遺障害の認定は受けられます。後遺障害認定で見られるのは診断書の全治日数ではなく、実際の治療期間・通院実績・症状固定時に残っている症状です。むちうちで6ヶ月以上通院を続けても痛みやしびれが残った場合、14級9号や12級13号の認定対象になる可能性があります。
認定を見据えるなら、整形外科で経過を一貫して記録しておくことが重要です。
まとめ
交通事故で「全治2週間」の診断書を受け取っても、それは治療期間の上限ではありません。診断書の全治日数は行政処分のための目安であり、実際の治療はむちうちで3〜6ヶ月、打撲や軽い捻挫でも2〜4週間かかるのが一般的です。
大切なのは、痛みや違和感がある間は通院を続けること、そして通院の間隔を空けすぎないことです。
交通事故後の体の不調にお悩みの方は、品川大井町整形外科・リハビリクリニックにご相談ください。院内でのレントゲン検査に加え、提携先の病院でのMRI・CT撮影にも対応しており、リハビリテーションまで交通事故治療を一貫してサポートしています。